千代田九条の会
ニューズレター No24(2009.5.29)


ニューズレター No24(2009.5.29)

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ニューズレター No24(2009.5.29)Web版

<事務局連絡先>千代田区猿楽町1−3−5 久野ビル3階

よびかけ人代表 鍛冶俊秀、隅野隆徳、中川雄一郎

千代田区九条の会第13回シリーズ学習会
「活憲」から見える労働権・生存権
−第9条や25条などに掲げられた
憲法の理念を生かすには−
 
 
 千代田区九条の会第13回シリーズ学習会が、2009年5月14日に区内で開かれました。
 今回の講師は法政大学大原社会問題研究所所長の五十嵐仁さんです。
 五十嵐さんははじめに「労働・政治が専門です。憲法ともかかわりをもっていて、発言したり『活憲』という本も出しています。大原社会問題研究所は90年の歴史があります。研究するだけでなく、研究される対象になる研究所は大原だけではないでしょうか。
 戦前戦後の時代に、当局に睨まれていたおかげで戦後も生き延びた研究所です。1949年に法政と一緒になりました。経営側労働側の双方の資料が残っています。どなたでも閲覧できますので皆さんもぜひ利用をしてください」とご自身と研究所について自己紹介をされ「最近労働問題が注目を集めています。平和、生存、労働が密接に関わっていてまさに私の出番がきたと思っています」と述べました。

前文と9条を持つ国として、
日本は先駆的な役割を果たすべき
 五十嵐さんは「前文と9条を持つ国日本は、国際紛争解決に武力を使わない正しい選択をした。これは一番遅れているように見えて実は『一周早いラストランナー』だった。9条は外国でも注目されている」と続けました。


積極的平和主義の実現こそ
 講演は第1の柱に移り、同氏は「平和には2種類ある。一つは『消極的平和』で戦争がないというだけの平和。二つ目は『積極的平和』で、生きる権利が確立されていて、その状態の下で平和が維持される社会」「私の著書に「活憲」という本がある。憲法は理想であり青写真である。そこにどう接近していくのか。それには為政者の努力が必要。憲法99条には擁護義務が書かれている。天皇、摂政、総理大臣、裁判官、公務員・・・は擁護義務がある」
 「なかでも9条平和主義、25条生存権、27条勤労権が重要。25条は大原研究所員だった森戸辰男さんが中心となって(ワイマール憲法にならって)憲法に挿入した。条文として入ったのはこれだけだ」「憲法研究会高野岩三郎氏が大原の初代所長。鈴木安蔵を憲法研究会に誘った。高野さんの弟子の森戸さんと大内兵衛さんも入った」「25条がいま大きな役割を果たしている。生活に活かす、政治に活かすことが大事。安心して豊かな生活を送れる社会が真の平和が保障される社会です」とエピソードを交えながら説明されました。


生きる希望と喜びこそが平和の源
 続いて「貧困や憎悪、将来への不安などが犯罪やテロを引き起こす。ワーキングプア(働く貧困層)が1000万人を超える社会は極めて異常で犯罪の温床になっている。この問題を放置しておいて平和な社会はありえない。人間らしい生活と労働の実現をしなければならない」と強調されました。
 

人間らしい生活と労働の実現を
 五十嵐さんは「2005年から人口は自然減になっている。出生が死亡よりも少ない。1998年から毎年3万人以上の自殺者がでている(ちなみに前年の97年は消費税増税9兆円の負担増になった年)。いまや日本は『持続できない社会』になりつつある」と警告し、解決するには「@雇用の安定、Aまともな賃金、B労働時間の短縮、をしなければ日本社会は持続しない。労働問題の解決は国民的課題である」と指摘しました。
 そして「組合や労働運動に対するイメージは好転している。困ったことがあったら労働組合へといわれるようになった。ユニオンという個人加盟の組合ががんばっている。たたかえば勝てる情勢になっている。何時までも守るではなく攻勢へ転じよう」と訴えました。
改憲策動の現段階
実質改憲・解釈改憲の併用へ
 講演は第2の柱に移りました。海賊対処法案をめぐる動きに触れ「自衛隊がソマリアに派遣され常態化されようとしている。かつては中曽根内閣の後藤田さんと言う人が体を張って派兵を阻止した。今はこんな(自民党の)政治家はいない」「北朝鮮の妄動が改憲勢力への後押し(援軍)をしている」と述べ、改憲派は「明文改憲から実質改憲(9条)・解釈改憲の併用へと変化している」と分析し、これに対しては「一つひとつに反撃をしていくことが大事で、安倍内閣を追い詰めたように、九条の会を増やすとかいろいろな運動を進めていこう」と呼びかけました。


世界と日本のギャップを埋めるために 
 
核廃絶の展望−オバマ政権の可能性と限界
 講演は第3の柱に入りました「オバマはアメリカの大統領として限界はあるが、変化の可能性がある。アメリカは新しい方向に転じつつある。4.5プラハ演説で初めて核使用国としての道義的責任に言及し、核のない平和で安全な世界を米国が追求していくことを明確に宣言する、と言明したことは重要で国内問題でも変化が起きている」


「力による平和」論の破産
 「憲法があったから日本は戦争へ巻き込まれなかったと言う議論があるが、半分正解で半分不正解だと思う。安保体制があったからベトナム戦争に巻き込まれたのだから」。
 自身の反戦活動にも触れながら「ワシントンに米兵58000人の戦死者の名前が刻まれた碑がある。日本がベトナム戦争の米軍出撃基地にならなければもっと犠牲者は少なかったかもしれない」。
 「イラクで自衛隊が戦闘行為に参加しなかったのは憲法があったから。自衛隊員は感謝しなければならない。九条の会に感謝状を出すべきではないか?」と述べ、「いまや武力では物事が解決しないと言うことがはっきりしている」と言い切りました。


新自由主義・市場原理主義の失敗
 最後に五十嵐さんは「小泉構造改革でズタズタになっていたところで国際的金融危機が起き日本はダメージが大きかった。小泉がぶっ壊したものを立て直す必要がある」として今度の総選挙の意義を「日本の政治構造の大転換を実現する選挙になる。戦後24回目の選挙だが今度は変転の時代の選挙。持続不可能な社会からの脱出が課題となる」と述べ、まとめとして「憲法理念の実現に向けての『反転』の時代が始まっている。世界の趨勢に加わり持続可能な社会に転換しなければならない」と結びました。


質疑・感想から
 講演の後、参加者から「少子化の問題は保守も革新も無い」とか「憲法については自民・民主の違いがないのでは?」「持続出来ない社会に企業側の問題意識は?」などの意見や質問が出されました。
 五十嵐さんは「政府の少子化対策は焼け石に水。企業のいやがることをやらせられない」。
 「民主党にも改憲派はいるが、憲法をないがしろにしてきたのは自民なのでペナルティーを与えなければならない。今度の選挙で改憲派を落とすことが重要」。
 「労使は対立するが、依存の関係でもある。アメリカ型の短期決戦的経営の誤り、合成の誤謬(ひとつの企業はリストラで儲かるが全体は衰退)がある。それを調整するのは経団連の役割だが果たしていない。セミナーに私を呼べと経団連には言っている」とユーモアを交えながら、質問の一つひとつに丁寧に答えてくれました。